齲蝕の主な原因菌であるStreptococcus mutansが口腔内にそれほど存在していないにもかかわらず、齲蝕を発症する児童に遭遇することがある。こうした児童では、S.mutansが菌数的には問題ないレベルにあるが、存在するS.mutans株が、特に齲蝕を誘発する能力の高い菌株である可能性がある。S.mutans齲蝕原性として、非水溶性グルカン合成能に注目し、小学生の刺激唾液から分離したS.mutans株について、非水溶性グルカン合成能を測定した(現在も引き続き、測定中)。また、S.mutansの非水溶性グルカン合成酵素の遺伝子であるgtfBを増幅するためのPCRプライマー、およびgrfB遺伝子をシークエンシングするためのプライマーを新規に設計した。 前述のS.mutans臨床分離株のうち、14株を用いて、これら設計したプライマーの性能を確認した。gtfB全体を含む領域をPCRで増幅後、各シークエンシングプライマーを用いてgtfB遺伝子全体の塩基配列の決定を試みた。その結果、確認を行った全てのS.mutans臨床分離株について、gtfBの全塩基配列を決定することができた。 今後、残りのS.mutans分離株についても、同様に劇班全体の塩基配列を決定し、菌株間の塩基配列の相違、およびこれら塩基配列の相違と非水溶性グルカン合成能との対応について調べていく予定である。
|