舌苔は口臭の主な原因であり、舌苔のコントロールは口臭の予防に不可欠である。本年度は新たな舌苔コントロール方法の開発のために、舌・舌苔の性状と揮発性硫黄化合物(volatile sulphur compounds : VSC)との関係について考察することを目的とした。成人40名(男性32名、女性8名)を対象とし、舌苔の写真撮影およびガスクロマトグラフィによるVSC測定を行った。なお、各検査の前は4時間以上、一切の口腔活動(飲食や歯磨き、含嗽)を禁止した。対象者を舌・舌苔の性状ごと(舌色 : 淡紅・淡白、舌苔 : 白色、黄色)に群分けし、その後、群間のVSC濃度め比較を行った。なお、各群間の比較にはt検定を用いた。その結果、舌苔色の白色群(24名)黄色群(16名)で分けた場合、硫化水素はそれぞれ平均値で2.26±2.47、3.93±3.36(p=0.078)、メチルメルカプタンは0.99±1.97、1.97±2.40(p=0.169)であり、黄色群がいずれも平均値として2倍弱であったが、統計的に有意な差はなかった。また、舌色での分類(淡白30名、淡紅10名)では、硫化水素はそれぞれ平均値で2.67±272、3.62±3.58(p=0.396)、メチルメルカプタンは1.30±2.12、1.62±2.42(p=0.696)と差はみられなかった。現在、舌清掃による舌苔のコントロールは行われているが、舌苔産生量のコントロールは行われていない。本年度の結果は口臭治療にいて舌苔の産生量をコントロールするという新しいアプローチ方法の開発の基礎情報となり得るものである。上記の結果より、舌の性状による口臭の強さに強い関係は認められないため、次年度は対象となる舌の状態を特定せず、舌の性状から判断した漢方薬による舌苔コントロールの評価を行う予定である。
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