口腔乾燥症の原因のひとつにストレスによる自律神経失調がある。しかしその臨床的な診断基準は明確化されていない。よって、加速度脈波を用いた客観的な自律神経系の機能的評価の有効性を検討することを目的とし、本研究を立案した。 1. 加速度脈波による自律神経機能評価と精神健康度(GHQ)、唾液中ストレスマーカー 安静時唾液および加速度脈波を測定した47名に対して、心拍変動周波数解析における低周波領域(LF)と高周波領域(HF)の比であるLF/HF値、精神健康度(GHQ)の合計点数、状態特性不安検査(STAI)、唾液中ストレスマーカーであるクロモグラニンAおよびコルチゾールを測定した。その結果、GHQとLF/HF値・状態不安・特性不安、LF/HF値と状態不安に有意な相関が認められた。 2. 唾液分泌低下者における自律神経機能評価と精神健康度 安静時唾液分泌量が0.1ml/min以下であったのは19名であった。そのうちGHQが6点以下である者を健常群(9名)、7点以上である者を精神神経症状あり群(10名)とした。前者のLF/HF値は0.73±0.47後者は4.70±3.86と有意に高かった(p<0.01)。 3. 考察 質問紙による精神健康度調査や状態特性不安検査は、繰り返し行うとその学習効果によって、正しい値が得られないことがある。また、いずれも10分程度の時間を要する。今回、加速度脈波測定によって、唾液分泌機能低下者においても自律神経機能を簡便に測定することができる可能性が示唆された。
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