1. 日本人およびマレー人のmtDNA多型解析 日本人およびマレー人ともに殆どの試料において、全塩基配列を決めることができ、日本人おいては末端まで分類された系統樹が作製された。さらに他の日本人データと総合、比較検討することでより膨大な日本人データとして、今後法医学的事例に対し非常に有用なものとなった。また、今回の塩基配列をDDBJ(DNA Data Bank of Japan)に登録することにより、法医学領域のみならず、遺伝学・人類学等の他分野の研究者にも活用されると考えられる。 マレー人においては、系統分類し他のアジア集団との比較を行ったところ、東南アジアの中でもマレーに特徴的な系統や分布が認められ、東南アジア、日本を含む東アジアや他のアジア地域との地理的かかわりや民族の移動の解明にも役立つと考えられる。今年度はこの結果を学会や論文として発表した。 2. マレー人のSTR多型 マレー人のSTRの16座位について検査を行った。用いた試料は実際の鑑定試料を想定し、歯牙及び血痕から抽出したDNAを変性DNAとした。様々な条件を設定することで、変性DNAからの検査が可能となった。さらに対立遺伝子頻度を算出し、他のアジア地域との近縁性の推定(Neigbor-joining tree)を行ったところクラスターを形成し、それぞれの特徴が表れていた。また今年度はこの結果を学会や論文として発表することができた。 今回、変性試料からのDNA抽出、そのDNAを用いての実験により得られたプロトコール、さらに日本人及びマレー人のmtDNAやSTR解析の結果は、実際の鑑定作業における個人識別から地理的由来の推測にも実用的で精度の高い情報となるばかりでなく、様々な分野に応用が可能となる。
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