本研究では、歯科領域での臨床応用に必要な条件を満たすために厚み振動型圧電トランスデューサの小型化・高機能化を図り、ハイドロキシアパタイト(以下HAとする)プレートへのフッ化物取り込み実験を実施することにより、in situ modeへの発展を検討した。 液中超音波発生用の厚み振動型圧電トランスデューサの小型化を図り、設計および作成を行った。作成した小型化厚み振動型トランスデューサ(8.0x10.0x1.0mm^3)の動作特性を、ネットワーク・アナライザーによって確認した。その結果、10V程度の低電圧駆動下で効率よくフッ化物の取り込みを可能とする超音波照射パワー・レベルを実現するとともに、安定な動作条件を確保できた。 HAプレートを超音波照射の有無による2つのテストグループに分け、両グループ共にNaF溶液(1000ppm F)へ3分間浸漬した。超音波作用グループには、小型厚み振動型圧電セラミックトランスデューサに信号発生器から2.25MHz、10Vの正弦波を印加することにより、HAプレートの試験面に超音波が照射されるように配置した。浸漬処理を施したHA試験片のフッ化物イオン濃度を測定して、HAプレートの単位面積当たりのフッ化物取り込み量を得た。 統計処理には、Student's t-testを用い、グループ問の有意差検定を行った。 超音波照射下における1000ppm FのNaF溶液中のフッ化物取り込み量は、超音波照射をしない場合よりも有意に大きいものであり(P<0.001)、フッ化物取り込みが165%増加した。 厚み振動型圧電セラミックトランスデューサの使用のもと、低電圧下で高効率の超音波照射パワー・レベルの向上を実現するとともに、安定な動作条件の確保により人体への安全性という点でも優れた特徴を有している。今回の実験結果と合わせて超音波照射下でのフッ化物取り込みの向上を図る本方式はin situ modelへの発展を十分に期待できるものと考えられる。
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