研究概要 |
Supraglottic swallow (SGS)やSuper supraglottic swallow (SSGS)などの嚥下手技は液体の命令嚥下で一定の効果が確認されている. しかし, 咀嚼嚥下(chew swallbw : CS)に応用した報告はない. CSでは食塊の嚥下前咽頭進行があり, 咽頭期にはより確実な声門閉鎖機能が必要で嚥下手技の効果が期待される. 今回は, 自然な咀嚼嚥下(Standard chew swallow : Std- CS), SG- CS, SSG- CS, さらに軽く発声(ハミング)させながら食させる方法(Humming chew swallow : H- CS)を加え, これらの嚥下手技がCSに応用しうるかを検討した. 本年度は通常の食事形態にて食事を摂取している健常男性5人(平均年齢30.8±4.8歳)を対象とした. 固体と液体の混合物のCSを各嚥下手技とともに行わせ, ビデオ内視鏡(VE)で観察した. VE所見から披裂間切痕の閉鎖, 咀嚼時間, Whiteout直前の嚥下前食塊咽頭進行などについて解析した. その結果, Std-CSよりSG-CS, SSG-CS, H-CSは早期の披裂間切痕の閉鎖を認めた. Whiteout直前の食塊先端位置はStd-CS以外では下咽頭に達する例は少なくH- CSでは認めなかった. また, SG-CS, SSG-CSは咀嚼時間が延長した. 以上のことから, 披裂間切痕の閉鎖を早期から行うことができるため, SG-CS, SSG-CS, H-CSはCSでの嚥下前食塊咽頭進行に対する嚥下手技として有用であると考えられた. H-CSでは開鼻声による口腔と軟口蓋の閉鎖が嚥下前食塊咽頭進行を遅らせている可能性が示唆された. これらの嚥下手技は, CSにおける誤嚥防止嚥下法として応用できる可能性が示唆された.
|