研究概要 |
Supraglottic swallow(SGS)やSuper supraglottic swallow(SSGS)などの嚥下手技は液体の命令嚥下で一定の効果が確認されている.しかし,咀嚼嚥下(chew swallow:CS)に応用した報告はない.CSでは食塊の嚥下前咽頭進行があり,咽頭期にはより確実な声門閉鎖機能が必要で嚥下手技の効果が期待される.前年度に通常の食事形態にて食事を摂取している健常男性5人(平均年齢30.8±4.8歳)を対象とし,自然な咀嚼嚥下(Standard chew swallow:Std-CS),SG-CS,SSG-CS,さらに軽く発声(ハミング)させながら食させる方法(Humming chew swallow:H-CS)を加え,これらの嚥下手技がCSに応用できる可能性を認めた.本年度は臨床的に,頭部外傷後の摂食・嚥下障害患者にH-CSを中心とした誤嚥防止手技の導入を行った.症例は21歳女性,入院時は水分誤嚥レベル,開口・舌運動障害,咀嚼や食塊形成・送り込みの不良のため固形物の摂取は困難であった.中間評価で喉頭内侵入や咽頭残留はあるものの,誤嚥は認めなかった.依然咀嚼は拙劣で,咀嚼嚥下時の誤嚥が残存していた.その後,H-CSを導入したことにより,凝集性の高い形態であれば誤嚥や喉頭内侵入を認めず咀嚼嚥下が一部可能となった.これらの嚥下手技は,CSにおける誤嚥防止嚥下法として臨床的にも応用できる可能性が示唆された.
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