皮膚潰瘍創実験モデルを用いた創洗浄の効果 我々が確立した皮膚潰瘍創実験モデル(ラット背側皮膚に開放創を作成し、緑膿菌PAO1株接種後、閉鎖環境においた状態)を用い、創作成2日目より連日、創部をシリンジとスプレーチップを用い、0.118g/cm2の圧力で生食および1%PVP-I溶液にて洗浄した。創作成7日目に組織を摘出し、組織学的に検証した結果、両群とも順調に上皮化が進行している様子が観察され、生食群と比較し1%PVP-I溶液洗浄群において上皮化が早い傾向を認めた。また、創面の細菌数は1%PVP-I溶液洗浄群において減少傾向を認めた。 創部の細菌感染は創傷治癒遅延原因の一つであるため、創面の細菌数コントロールは重要だと考えられている。本研究より、細菌がheavy contamination状態にある創傷では1%PVP-I溶液による洗浄が有効であり、また治癒を妨げないことが確認された。 現在臨床の現場では創部を洗浄する際に用いる溶液として、水道水や生理食塩水が一般的である。創部に対する消毒は禁忌との傾向が強いが、それは清浄化された創傷の場合であり、適切にアセスメントを行い、明らかに細菌がheavy contamination状態にある創傷では、1%PVP-I溶液による洗浄も有効な場合があると考える。 実験成果の発表 平成20年度に得られた結果のうち、細菌と創傷治癒に関する検討について、国内外の専門学会にて発表を行なった。
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