皮膚潰瘍創実験モデルを用いた銀イオン(Ag+)が創傷治癒過程にもたらす効果 本研究では、創傷治癒を阻害せず、創感染を鎮静できる抗菌剤以外の物質として銀イオン(Ag+)に注目し、銀イオン含有ドレッシング材を用い検討を行った。 方法:我々が確立した皮膚潰瘍創実験モデル(ラット背側皮膚に開放創を作成し、緑膿菌PAO1株接種後、閉鎖環境においた状態)を用い、創作成および創部への緑膿菌接種直後に銀イオンを含有したドレッシング材を塗布した。コントロール群には銀イオンを含有しない同素材のドレッシング材を用いた。 結果:創作成3日目に創部を摘出し、肉眼および光学顕微鏡的に観察した結果、両群とも創部が乾燥する傾向がみられた。また、両群間の創面の細菌数には差を認めなかった。この結果より、創部滲出液の少ない状態では、銀イオンに含まれる抗菌作用が適切に得られない可能性があると考える。 意義と重要性:創部の細菌感染は創傷治癒遅延原因の一つであるため、創面の細菌数コントロールは重要だと考えられている。しかし、肉眼的観察に基づく創部環境のアセスメントを誤ると、ドレッシング材が有する作用が適切に得られない可能性が示唆された。 創傷治癒機転がうまく働かない実験モデルの検討 創傷治癒過程において、受傷直後の炎症反応は重要だと考えられている。その炎症反応に関わるサイトカインの一つとしてTNF-αの重要性も広く認識されているが、好中球とTNF-αの関連性については未知の部分が多い。本年度は皮膚潰瘍創実験モデルに抗TNF-α抗体を投与し、創部炎症反応が遅延するモデルについて検討を行った。 実験成果の発表 平成20、21年度に得られた結果のうち、細菌と創傷治癒に関する検討について、国内外の専門学会にて発表を行ない論文として公表した。
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