体位変換は頻繁に行われる基本的な看護技術であるが、その方法については根拠が明らかにされていない部分も多く、個々の看護師の経験を元に実施されているのが現状である。本研究は、身体の位置の変化(角度および移動速度)に着目し、体位変換の実施方法と循環動態の関係を明らかにし、安全な体位変換について検討することを目的としている。平成20年度は、まず、国内外過去10年間の先行研究の検討を行った。その結果、(1)体位変換実施直後から15分間は循環動態が変化しやすいこと、(2)循環動態の変化は、身体の位置を動かすことによる一時的な静脈還流量の減少に起因していること、の2点が明らかとなった。以上の結果を踏まえ、健康な成人5名(30歳代女性)を対象にパイロットスタディを実施した。測定項目は、身体の位置変化について3軸角速度計を用いて角速度を測定し、血液循環については赤外線酸素モニタ装置を用いて、酸素化ヘモグロビンおよび脱酸素化ヘモグロビン変化量を連続的に測定することとした。赤外線酸素モニタ装置のプローブは腓腹筋辺縁に装着した。その他、心拍数、血圧の測定を行った。パイロットスタディの結果、仰臥位から左右側臥位への体位変換実施に伴い、一時的に、下肢の静脈血流量の鬱滞を示す変化が生じることが確認された。課題として、身体の位置変化を適切に把握するために、角速度の測定方法(サンプリングタイム、測定点)について検討を重ねる必要があることが明らかとなった。
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