平成21年度は、体位変換を実施した際に生じる、患者の身体の位置の変化と、循環動態指標の関係を明らかにするために準実験研究を行った。対象は、研究協力を依頼し同意の得られた健康な成人15名(男性:5名、女性:10名)。実験の手順は以下の通りである。1)対象者は、ベッド上で仰臥位になり10分間安静を保つ。心拍数、血圧、ならびに赤外線酸素モニタを用いて、酸素化ヘモグロビン変化量(Δ02Hb)および脱酸素化ヘモグロビン変化量(ΔHHb)を、安静開始時より実験終了まで連続的に測定する。赤外線酸素モニタのプローブ装着部位は、側臥位時に上側となる腓腹筋辺縁部とする。2)安静時間が終了したら受動的に側臥位(左/右)へ体位変換を行う。この時、3軸加速度計を用いて加速度を測定する。3)10分間側臥位を保持した後、再度、仰臥位へ受動的に体位変換を行う。4)10分間の安静仰臥位を保った後、1回目の実験を終了する。5)後日、1回目と逆の方向へ体位変換を実施する。 仰臥位から側臥位へ体位変換を行った直後より、Δ02HbおよびΔHHbの速やかな変化が確認された。この変化は、側臥位から仰臥位へ戻す際も同様に確認された。現在、本実験で得られたデータの分析中である。今後、加速度計で得られた身体の位置の変化と、循環動態指標の関連について分析を重ねることで、循環動態が不安定な患者や、長期安静状態にある患者などに対して、安全な体位変換の実施方法を検討する際の資料となると考えられる。
|