本研究は、日本とフィリピンの二国間における経済連携協定(EPA)の合意に基づき、将来、フィリピン人看護師が日本の医療現場に就労し、同僚として日本人看護師と共に働く可能性が十分考えられる背景から、日本とフィリピン人看護師の職業的アイデンティティの実態を明らかにし国際比較する目的で調査を実施した。平成20年度は、予備調査として国内の大学とフィリピンでパイロット・スタディを実施した。フィリピンにおける予備調査の結果より、職業的アイデンティティは、海外就労への関心度と看護学生の実習の達成感と正の相関があった。また、学年別では、実習の達成感と職業的アイデンティティは3年次よりも4年次で高かった。以上より、看護学生の職業的アイデンティティ、実習達成感を高める学年別教育アプローチなど支援方法の確立が重要であることが示唆された。なお、予備調査の結果は、平成20年10月に第49回日本熱帯医学大会・第23回日本国際保健医療学会学術集会合同大会で発表済みである。その予備調査の結果を基に、日本とフィリピンで本調査を実施した。今後、その本調査の結果を分析し、1) 日本人看護学生とフィリピン人看護学生の職業的アイデンティティの確立過程に差異があるかを考察する。2) 日本人とフィリピン人看護学生の職業的アイデンティティを縦断的に調査し、アイデンティティの発達、確立過程に違いがあるのかを明らかにする。3) 日本とフィリピンの看護教育プログラムを比較する。 今後の研究継続は、職業的アイデンティティ確立のための看護教育方法、教育プログラムについて考察するために、重要であると考える。
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