日本人看護師の海外渡航経験の特徴を把握するため、インターネット上のリサーチモニターのうち、職業を看護職(准看護師を含む)として登録している者2029名に調査を行い、分析した。 ・調査に同意済の有効回答数1040(51.3%) ・海外渡航経験:なし278(26.7%)、休暇・観光のみ657(63.2%)、休暇・観光以外105(10.1%) ・渡航目的:看護関係では「研修・インターンシップ」、看護関係以外では「語学研修」が最多。 ・渡航先(複数回答):上位3か国はアメリカ、オーストラリア、カナダ。80%以上が「高所得国」。 ・今後の海外渡航の希望の有無と実現可能性:今後の渡航希望は、最高学歴が学士以上の者、休暇・観光以外での渡航経験者、英語自己評価が高い者、看護専門分野がある者、で有意に高くなった。渡航の実現可能性は、休暇・観光以外での渡航経験者、英語能力自己評価が高い者で有意に高く、末子の年齢が0~18歳の者で有意に低くなった。 ・考察:日本人看護師の休暇・観光以外での海外渡航経験者は全体の約1割であった。今後看護教育の高学歴化、看護師の英語能力の向上、看護の専門化が進めば、海外を目指す者が増える可能性がある。国の経済状況や家族因子などを鑑みて長期的・永久的な海外移住は少ないと考えられ、日本人看護師の海外渡航は、人材流出と言うより看護師のリフレッシュや知識・技術の向上に繋がり、帰国者による日本の看護の国際化への貢献が期待される。看護教育者や管理者は、海外渡航希望者のキャリアステップへの対応、帰国看護師の能力の活用等を具体的に検討していく必要があると示唆された。また、個々の看護関係の海外渡航経験を質的に分析しまとめる重要性も示唆された。 ・本調査は、病院、職能団体、学会などを通した対象選択によるサンプリング・バイアスを考慮し、看護師個人に直接依頼できるインターネット法とした。インターネットの利用は珍しくなくなってきているが、リサーチモニターの利用は、結果の一般化への本研究の限界として考慮されるべき点である。
|