研究概要 |
薬剤の血管外漏出は, 静脈注射を実施する際に起きる合併症であり, ヒトにおいて再現することは困難であるため, 実験動物(マウス)を用いた基礎的研究を行った. 使用薬剤として先行研究により皮下に漏出させた場合, 炎症が惹起されるジアゼパム注射液(セルシン, 武田工業薬品株式会社), 添付文書に「血管外に漏出した場合には, 漏出部位周辺に色素沈着を, また, 疼痛, 知覚異常, 腫脹等の局所刺激を起こすことがある. このような場合には, 温湿布を施し(疼痛, 腫脹等の急性炎症症状が強い場合には冷湿布により急性症状がおさまった後), マッサージ等をして吸収を促進させる等適切な処置を行うこと.」との記載がある含糖酸化鉄注射液(フェジン, 日医工株式会社)使用した. 薬剤を背部皮下組織に漏出後, 冷罨法, 温罨法を30分間施行した. 漏出後24時間目に肉眼的観察, 写真撮影を行った後, 皮膚組織を摘出し, 光学顕微鏡的観察および好中球数の測定を行った. 肉眼所見は, 皮下組織側および表皮側どちらの観察においても, 顕著な変化はみられなかった. 漏出部位の好中球数を測定した結果, 対照群および温罨法群と比較し, 冷罨法群の好中球数が有意に少なかった. 温罨法群と対照群の好中球数に有意な差はみられなかった. 以上のことから, 薬剤が皮下組織に漏れることにより, 炎症が起こっていること, また, その際に行われる冷罨法は好中球の浸潤を抑制することが明らかとなった. これらの結果をもとに「薬剤の血管外漏出情報センター」(http://ichi.et.soft.iwate-pu.acjp/~extravasation/importance.html)を開設し, 情報開示を行った.
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