本年度は、プログラム開発を行い、それの試用を行った。プログラム開発においては、昨年の現状調査と自律神経活動を指標とした背面開放座位の実験結果をもとに作成し、プログラム名を"起きる"看護ケアプログラムと命名した。看護師が臨床現場で手軽に持ち運びでき、いつでも見ることができるように小冊子を作成し、さらに小冊子だけでは説明できないプログラムの理論や考え方、プログラム開発に至った研究のプロセス等を雑誌図書の特集に掲載し製本とした(ナーシングトゥディ10月号特集)。また、プログラム内に含まれている背面開放座位の看護技術を安全で手軽に提供できるよう背面開放座位保持具を考案し[Sittan]と命名し、特許を申請した(申請中)。 上記の内容を含んだ"起きる"看護ケアプログラムを東海地方の1総合病院の脳神経外科病棟で試用した。試用の結果、プログラム内容には修正がなく、対象患者である慢性期脳血管障害患者に表情の変化、頸部自力保持などの僅かな効果が見られた。また患者の家族にも良い影響を及ぼし、起きることの重要性を家族が認識し、介護意欲を高める結果となった。 一方で、臨床看護師にプログラムを指導、教育する際の方法に何点か修正を認めた。修正内容は、臨床看護師への指導を定期的に数回に分けて行うこと、教育はプログラムの手技だけではなく、プログラムの重要性を含んだ理論や哲学等も説明すること、随時、質問に答えられる体制を取ることであった。プログラム導入には、臨床看護師への教育方法も詳細に検討していく必要があることが分かり、それらを踏まえて、プログラム導入の計画を立てていく必要がある。次年度は複数施設でプログラムを計画的に導入し、対象を患者、家族、臨床看護師の視点から検証していく予定である。
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