研究概要 |
前年度,老健における職員が受ける暴力被害について全国調査し,実態を明らかにした.今年度は,前年度の調査をもとに老健の暴力被害について,被害者である職員の体験を明らかにすることを目的とした. 前年度の調査実施時に,今回のインタビュー調査実施への協力を依頼した.このうち,暴力被害の経験のある者で,面接調査を希望する者をリクルートし,20名の了解が得られた.そして,対象者の所属する施設を訪問し,暴力被害の詳細と,暴力被害を受けたことの体験を明らかにするための面接調査が可能であった16名の老健職員に半構成的面接を実施した.分析は,質的帰納的に行った.なお,本研究は,日本赤十字広島看護大学の研究倫理委員会の承認を得た. 16名の職種は,介護職,看護職,介護支援専門員,理学療法士,支援相談員であった.分析の結果,暴力行為によって【情緒的反応】や【利用者に関わることの戸惑い】等がみられるものの,【専門職としてのプロ意識】や【暴力行為への理解】,【同僚による支え】,【上司の支え】などによる対応がなされていた.従って,研修会などで専門職としての知識・技術を研鑽することによる専門職としての意識向上や,暴力行為を受けた職員を支える同僚・上司の重要性,暴力行為に対応する組織的体制の確立の必要性が示唆された. 本研究の結果から,老健における今後の具体的な暴力対策の検討につながるよう課題の抽出を行い,暴力対策へのあり方を整理し,老健における暴力対策のあり方の提示に向けた基礎資料を作成する予定である.
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