本研究は、高齢がん患者の背部マッサージによる症状緩和効果の検証を行うものであり、本年度は「健康な高齢者に対する背部マッサージの効果」、「高齢がん患者に対する背部マッサージの効果」について検証した。なお、高齢がん患者に対する背部マッサージ効果の検証については、現在も実験中であるため、実験終了後、研究成果を報告する。 1.健康な高齢者に対する背部マッサージ効果の検証 本研究では、22名の男性高齢者を対象にマッサージを実施したが、狭心症の治療中である者や高血圧の治療のためβ遮断薬を内服している者の2名を除外し、20名を対象に分析を行った。対象者の背景は、平均年齢71.4歳であり、身長163.2cm、体重65.2kgであった。現病歴があると回答した者は14名であり、既往歴があると回答した者は17名であった。本研究は、マッサージの介入研究であるため、背部接触の抵抗感について確認したところ、抵抗を示したものは1名であった。しかし、背部マッサージ前中後に不快感や拒否などの反応や発言がみとめられなかったため、マッサージを実施した。 背部マッサージの介入による身体的変化では、マッサージ介入直前を基準として心拍数の変化を比較するとマッサージ介入終了後10分後、20分後にそれぞれ有意に低下していた。次に、収縮期血圧の変化を比較すると、マッサージ介入終了直後からマッサージ介入終了後10分後に有意に低下していた。さらに、SPO2の変化を比較すると、マッサージ介入直前からマッサージ終了直後に有意に上昇し、マッサージ終了直後からマッサージ介入終了後10分後、20分後にそれぞれ有意に低下していた。 背部マッサージ介入前後の心理的変化では、POMS短縮版のうち緊張-不安、敵意-怒り、疲労感、混乱の項目において、マッサージ介入前より介入後に有意に低下していた。また、活気の項目では、マッサージ介入前より介入後に有意に上昇していた。一方、簡易倦怠感尺度では、マッサージ介入前より介入後に有意に低下していた。 上記の結果から、背部マッサージの身体的効果として副交感神経活動を有意にすること、心理的効果として、緊張・不安、敵意・怒り、疲労感、混乱、倦怠感を軽減させ、逆に活気を上昇させることが明らかになった。
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