研究概要 |
精神科デイケアは,精神保健福祉対策では通院医療に位置づけられるが,充実した生活支援も行っている。生活支援は,精神障害者の社会参加を促進するための重要な支援である。しかし,精神科デイケアの生活支援の効果を検討するための,精神障害者の生活機能に関する研究はあまり行われていない。そこで,平成21年度から23年度では,精神科デイケア通所者の生活機能を評価指標にし,精神科デイケアについての縦断研究を行う。 平成22年度は,3年間の縦断研究のうちの2年目であった。平成22年度の研究の目的は,精神障害者の生活機能の実態と,生活機能の変化を明らかにすることである。対象は,平成22年度と同様の,精神科デイケア通所者うち,統合失調症と診断された者915名,および精神障害者小規模作業所通所者のうち,統合失調症と診断された者417名であった。方法は,精神障害者生活機能評価尺度などを用いた質問紙調査である。分析対象は,平成21年度と平成22年度の質問紙調査に未回答のない,精神科デイケア通所者220名(24.0%),精神障害者小規模作業所通所者230名(55.1%)であった。 その結果,精神科デイケア通所者の生活機能は通所目的や同居家族の有無などの個人因子によって差のあることを明らかにした。また,精神科デイケア通所者は昨年の生活機能よりも高い傾向にあることを明らかにした。生活機能の下位尺度である活動点と参加点については,活動点が高くなっており,参加点には変化がなかった。精神障害者小規模作業所通所者ではこのような変化はみられなかった。今回の結果は,平成23年度まで縦断研究を実施するための比較する基準になるため,有意義であった。
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