今年度は外来がん患者の終末期医療に関する意識の推移を検討するためのベースラインデータを収集した。調査方法は自記式質問紙を用いたアンケート調査であり、東京大学医学部附属病院放射線科外来を受診中のがん患者310名を対象とした。がん患者が望ましい死を迎えるために重要だと回答した割合は以下のとおりである。からだに苦痛を感じないこと(92%)、おだやかな気持ちでいられること(97%)、望む場所で過ごすこと(93%)、楽しみになることがあること(96%)、家族と一緒に過ごすこと(89%)、信頼できる医師にみてもらえること(96%)、生きていることに価値を感じられること(89%)、やるだけの治療はしたと思えること(89%)、身の回りのことが自分でできること(93%)、死を意識せずに普段と同じように毎日を送れること(88%)、信仰を持っていること(31%)、家族やまわりの人に弱った姿をみせないこと(66%)、人に迷惑をかけないこと(89%)、自然に近いかたちで最期を迎えること(88%)、先々何がおこるかをあらかじめ知っておくこと(63%)。がん患者に対する望ましい死のあり方に関する調査はわが国では初の試みであり、一般市民、医師、看護師に対する調査結果と比較することによって、がん患者と医療者の考え方の相違などが明らかになった。がん患者の望ましい死に対する考え方を理解することは、がん患者のケアを行う医師、看護師などの医療者にとって重要なことである。今後はこの対象者を追跡し、望ましい死や終末期医療に対する意識の変化やその達成について調査することが課題である。
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