今年度は昨年度ベースラインデータを取得した外来がん患者に対して追跡調査を行った。調査方法は自記式質問紙を用いたアンケート調査である。昨年度対象となった東京大学医学部附属病院放射線科外来を受診中のがん患者310名のうち、死亡47名、追跡不能2名、拒否1名を除く260名に調査票を配布または郵送し、203名から回答を得た(回収率78%)。平成20年度から平成21年度に統計学的に有意に変化した変数は以下のとおりである(数字は平成20年度と平成21年度の「そう思う」と回答した割合)「おだやかな気持ちでいられること(98%、95%)」「信頼できる医師にみてもらえること(99%、99%)」「16医師と話し合って治療を決めること(99%、97%)」「自分の気持ちをわかってくれる人がいること(93%、94%)」「家族から支えられていること(93%、93%)」「亡くなるときに家族がそばにいること(84%、79%)」「明るさを失わずに過ごすこと(96%、94%)」「36楽しみになることがあること(97%、97%)」「希望をもって過ごすこと(93%、92%)」「さいごまで病気とたたかうこと(81%、74%)」「やるだけの治療はしたと思えること(90%、84%)」「できるだけ長く生きること(62%、47%)」であった。平成20年度と平成21年度の比較では多くの変数が統計学的に有意であっても、その変化量は小さかった。ただし、さいごまで病気とたたかうなどの治療と延命を望む意向は絶対値としても大きく減少していた。今後はこの対象を追跡し、死亡者と生存者の比較を行うことにより、より終末期状態に近い患者とそうではない患者の違いを明らかにすること、生存者に対しては望ましい医療が行われているか、死亡者に関しては遺族の視点から望ましい医療が行われていたかといった、望ましい死の達成について調査することが課題である。
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