集中治療室(Intensive Care Unit; ICU)は、重篤かつ複雑な病態から、侵襲的なストレスや精神的ストレスを受けることが多いため、せん妄を発症しやすい。中でも人工呼吸器の装着は、気管挿管や喀痰排出に伴う苦痛、行動制限による苦痛などさまざまな苦痛を患者に与える。このような種々の苦痛から患者を守り、患者の安静を保ちなおかつ管理を容易にするという目的で持続的に鎮静薬を用いる。ICUにおける鎮静は極めて重要であるが、適切な鎮静は難しい。本研究の目的は、術後集中治療室(以下:ICU)において持続的に鎮痛・鎮静剤を使用する患者の苦痛や不快の程度と鎮静または興奮の度合いが、せん妄発症にどのような影響を及ぼしているかを明らかにすることと、ICU入室中に患者が体験する苦痛や不快とせん妄の関係を明らかにすることである。対象は、持続的に鎮痛・鎮静薬を使用し、人工呼吸器を装着する20歳以上で、心疾患で手術を施行した者で、血管疾患や精神疾患、神経ブロック薬を使用した患者を除外した25名であった。調査内容は、基本属性として診療記録から対象者の年齢・性別・術式などの情報を収集し、ICU入室中は、鎮静レベル(RASS)・苦痛の程度(BPS)・せん妄の有無と程度(NDRS)・対象者が体験している苦痛の観察と、覚醒レベル(人工呼吸器装着中のみBISモニターを用いて)の測定を行った。結果は、対象者の経験している苦痛は、口渇・同一体位による腰部の痛み・肩の痛み・創痛(特にドレーンの刺入部)が多くみられた。現在、専門家のスーパーバイズを受けながら、鎮静レベル(RASS)・苦痛の程度(BPS)・覚醒レベル(BPS値)とせん妄の有無と程度(NDRS)の統計学的分析を行っている。
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