研究概要 |
本研究は,筋萎縮性側索硬化症(以下,ALS)患者とその家族への診断時から呼吸器装着前までのニーズを明らかにしALS患者・家族への支援プログラムを作成することを目的としている.本年度は、ALS患者とその家族を対象に継続的に面接しニーズに合わせて支援を行った.対象の概要:ALS患者6名(男性2名,女性4名)及びALS患者を介護している家族5名(男性2名,女性3名)の計11名.研究期間中,患者の6名中4名が胃瘻造設(以下,PEG)し,2名が侵襲的人工呼吸療法(以下,TPPV)を開始した.その内1名は,呼吸器装着の意思を固めた上で装着となったが,もう1名は,呼吸器装着を希望されていなかったものの,他の疾患の発症による救急搬送後にTPPV装着となった.家族5名中1名が病気の発症により介護が困難となり長期入院していた.また,6名中3名が独居であり,そのうち2名が病気の進行に伴い施設入所となった.呼吸器装着前のALS患者と家族の支援ニーズとして,特に,【告知後の精神的ショックに対するサポート】,【日常生活介助が必要となった時期の療養環境支援体制の整備】,【PEG造設の意思決定支援】,【TPPVの意思決定支援】,【療養の場の意思決定支援】の5つが明らかとなった.これらの支援については,諸外国においても多職種専門チームが,患者と家族をトータルに支援することが望ましいとしているが,実際は,神経難病専門病院以外に通院するALS患者も多くおり,専門的な支援を受けるには限界があった. ALSの支援には,院内外の多職種といかに"うまくつながる"かが鍵となる.その対処の一つの方法として,患者の生活全体をコーディネートする役割である退院調整看護師の活用が期待され,今後は,退院調整看護師向けにALSの患者と家族に対し,病気の進行に合わせた面談のポイントや情報提供の仕方等,活用しやすい支援プログラムを作成することが期待される.
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