本研究の目的は、心不全および心疾患に広く用いることの出来る健康に関連するQOL尺度であるMacNew Heart Disease Health-Related Quality of Life Questionnaire(以下MacNew)の日本語版を作成し、信頼性及び妥当性を検証することである。平成20年度はMacNewの日本語版の暫定版の改善及び予備実験を経て204名の慢性心不全患者に対して本調査を行った。この結果、理論的関連があると考えられるSF36及びHospital Anxiety and Depression Scaleの全ての下位尺度間において有意な相関を示し、基準関連妥当性が確認された。また、因子分析により原版と同じ3因子構造が確認され、心機能の分類(NYHA)によるMacNew平均得点の比較から、重症者では軽度・中等度の患者よりもQOL得点が5%水準で有意に低くなることが明らかとなり、構成概念妥当性が確認された。さらに、全てのCronbachα係数は0.7以上であり、十分な内的整合性を持つことが確認された。よってMacNew日本語版の信頼性及び妥当性が確認され、日本人心疾患患者の健康に関連するQOLを測定可能となったことは非常に意義があった。一方で、調査の対象者である慢性心不全患者には高齢者が多く、視覚などの感覚機能の低下や身体機能の低下などから、自己記入による調査が困難であり、面接による聞き取り調査となり、原版とは異なる調査方法となった。また、疾病の知識に乏しく、心不全に関連する身体的、精神的症状等について、年のせいだと考え、それが回答へ影響した可能性があることから、これらの課題を踏まえ、平成21年度には、年齢が成人期の有職者も多く含まれるよう設定し、自己記入の可能な対象者とし、郵送調査の方法をとった。また、対象を心不全以外に、虚血性心疾患へ広げた。現時点で158名より回答を得ているが、成人期の自己記入可能な対象者の確保がやや困難であり、分析には至っていない。そのため、平成22年度には、さらに対象者数を増やし、虚血性心疾患を対象とした自己記入方法によるMacNew日本語版の完成を目指す。
|