本研究の目的は、新人看護師が死後の処置場面において個人の内面に生じた感情と現在、死後の処置場面において生じる感情を明らかにし、死後の処置を行なう新人看護師への支援を検討することである。 今年度はA県病院に入職後1年経過した看護師を対象に初めておよび現在の死後の処置時の状況および個人の内面に生じた思いなどについて自記式質問紙調査を実施した。結果、対象者は382名、年齢は26.19±7.031歳であった。死後の処置経験は83.5%にあり、入職後3か月間に47.2%が実施していた。初めて死後の処置を行なった時の思い(複数回答)は、「死に慣れたくない」73.7%(74.3%)、「悲しい」72.5%(78.1%)、「切ない」70.2%(722%)などであり、初めての死後の処置と現在の思いは大きな変化がなかった(カッコ内は現在の思い)。また、死後の処置を重ねることで「先輩に言われるがまま」「家族への声掛けできない」「死の実感がない」「業務に慣れることで精いっぱい」の思いは減少し、「生前の看護を思い出す」「元気だった時の姿を思い出す」「悔いる」「回避したい・やりたくない」が増加する傾向がみられた。 一方で、死後の処置に関する看護基礎教育の実態を把握するため1192校(准看護師養成学校を含む)を対象に自記式質問紙調査を郵送法にて実施した。結果、451校(回収率37.8%)中、死後の処置を教授している教育機関は75.2%、教授方法は「講義」99.4%、授業時間「90分以内」が多く、教員が基礎教育において死後の処置を教授することに約半数が困難感を抱いていた。また死後の処置時に看護師に生じる可能性のある思いについては、「悲しい」81.6%、「敬度」80.7%、「涙があふれる」76.6%の順に予測して教授していたが、実際には、「敬度」「涙があふれる」については、新人看護師の思いと乖離していることが明らかになった。今後は、他の調査結果をあわせて支援について多角的に再検討を行ない、結果公表に向けた準備をする。
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