本研究の目的は、新潟県内の施設と高齢大腿骨頚部骨折患者を対象に、入院期間中にどのような退院指導が行われているのかについて、医療施設と患者または家族に対しアンケート調査をするとともに、退院後の患者のADLと患者が日常生活を送る中で困難と感じている事柄について、アンケートと訪問調査を通して退院指導の現状と課題を明らかにし、退院指導の内容を検討することで、ADLを低下させることなく、かつ患者と家族が安心して退院し円滑にもとの日常生活に移行できる個別性を踏まえた退院指導プログラムを開発することにある。 対象施設では、入院直後に施設が独自に作成したチェック用紙を用いて退院支援に関する調査が行われ、それに基づきMSWへの協力要請が行われていた。また入院中は、担当看護師が中心となり、退院支援に関する情報は適宜専用の用紙に追記され情報共有が図られる他、適宜関係職種を集めミーティングが開催されていた。80~90代の患者でも元来健康な者は、今回の入院を機に初めて介護サービス導入となるため、家族による介護申請の手続きが必要となる。また、これまでに介護サービスを受けていた患者でも、介護度に応じて受給できる介護サービスが変わるため介護度の再調査が必要となる。よって看護師は、これらの手続きに要する時間も考慮し、適宜進行状況を家族に確認しながら退院調整を行うことが求められていた。 入院経路は大きく2つ、在住場所で(1)施設からと(2)自宅からとに分類することができた。一般的に、大腿骨頚部骨折後はADLが1~2ランク低下することが知られているが、施設に戻る患者の方がADLは大きく低下する傾向にあった。(1)施設からの入院患者は認知症を有している患者も多く、手術治療後はリハビリ期間も少ないままに施設に戻る者が多いが、(2)自宅からの入院患者は認知症を有するものが少なく、自宅に戻る患者も多いため、行政手続きを含め自宅改修や日常生活に関する細やかな調整が必要となっていた。
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