本研究の目的は、新潟県における高齢大腿骨頚部骨折患者を対象に、ADLを低下させることなく、かつ患者と家族が安心して退院し円滑にもとの日常生活へと移行できるための個別性を踏まえた退院指導プログラムを開発することにある。一般的に術後のADLは1~2ランク低下することが知られている。入院時に退院時のADLを予測することができれば、より早期から患者に対し効果的に関わることができ、ADL低下の予防に繋がるのではないかと考えた。そこで今回は、退院時におけるADLを予測できる入院時スクリーニングシートの作成を目的とし、カルテ調査を行った。 新潟県内にあるA病院の協力を得て、転倒による大腿骨頚部骨折にて手術を受けた65歳以上の患者を対象に、在住場所・退院先ともに自宅の患者を無作為抽出しデータ収集を行った。 対象は50名、平均年齢は84.7±7.2歳、最高年齢は98歳だった。性別は、男性9名・女性41名で、女性が約8割を占めていた。在院日数は37.3±10.0日、術前待機時間は1.3±1.5日で、入院当日に手術を受ける患者は18名(36.0%)、翌日が16名(32.0%)と約7割が入院翌日までに手術を受けていた。また、50名のうち認知症をもつ患者は12名(24.0%)いたが、退院時のBarthel Index(日常生活動作、以下BI)との間に有意差はなかった。 術後にせん妄症状を呈した患者は15名(30.0%)で、より高齢な患者にせん妄が出現していることがわかった(P=0.033)。また、傾向として術後にせん妄が見られた患者は、退院時のBI値が低い傾向にあった。 入院時のBI値と退院時のBI値との間には、食事、排尿、排便の項目間に有意差が見られ(すべてp=0.0001以下)、これら3項目における入院時のBI値が低い患者ほど退院時のBI値も低値であった。
|