平成20年度研究目的: 家族アウトカムの設定、及び家族の経験の継続的分析を可能にするためのデータベースの構築。 研究成果: 1. 家族アウトカムの設定のため、研究者らが既に得ていた神経膠芽腫患者の家族の療養課程における心理・社会的変化の比較、対象として再発・進行肺がん患者の家族、及び中皮腫患者の家族を対象とした面接調査を行った。その結果、両者の間には長期的アウトカムや中間アウトカムに関する差はほとんどないことが明らかとなった。しかしながら、治療期における患者が呈する症状の違いや、終末期における情緒的な相互交流等には異なりが認められ、負の中間アウトカムの同定には至らなかった。今後は、対象者数を増やし、家族アウトカムの全項目の設定を行うこととする。 2. 計画段階では看護師への調査研究からバリアンス項目の設定を行う予定であったが、同様のテーマの研究が散見されたため、これまでに発表された論文を集約し、メタ統合の分析手法を用いてがん患者の家族に対する看護システム、ケアの不足点を明らかにすることとした。そこで、医療システムの急速な変化を考慮し、文献検索は2000年以降に絞り、"がん""家族看護"などのキーワードを設定して対象論文を抽出した。さらにそれらの中から分析に耐えうるものをハンドサーチした結果、該当する文献は5件であった。しかし、これらを精読した結果、論文間の関係性において解釈的なメタファーが見いだせず、他の質的研究者等とも検討した結果、成果の統合は困難であるとの結論に至った。今後は当初の計画通り調査研究を行い、データベース化を進めることとする。
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