【目的】術後患者の不眠は術後せん妄の発症要因になることから早期に対処する必要がある。本研究は高照度光療法を用いて術後患者の主観的な睡眠感への効果を検討した。 【研究方法】研究実施病院における研究倫理審査委員会の承認を得て、無作為化比較試験であること、高照度光療法の副作用とその出現率などについて術前に文書を用いて説明し、病棟への同意書の提出によって研究参加の同意を確認した。対象は上下部消化器疾患により予定手術を受ける患者27名であった(平均年齢66歳)。高照度光を照射する介入群と病棟で通常為されるケアのみ受けるコントロール群への割り当ては封筒法で行った。睡眠感は主観的睡眠感を測定する5因子(全16項目)から構成されたOSA睡眠調査票(MA版)(以下OSAとする)で評価し、経験年数5年目以上の病棟看護師が術後1日目から3日目までの午前中に実施した。高照度光療法は光装置をベッドサイドに設置し、介入のみ実施する研究者1名が術後1日目から3日目までの朝2時間の照射(1.500Lux前後)を行った。 【結果および考察】対象者27名のうち14名(男:女=10:4)が介入群へ、13名(男:女=9:4)がコントロール群に割り当てられ、介入群の中で高照度光療法による副作用を呈した対象はいなかった。平均年齢は両群で有意差はなかった(p=0.07)。睡眠感の因子得点の平均値(±SD)を術後日数別に比較すると、術後1日目の因子I<起床時眠気>と因子IV<疲労回復>で、介入群がコントロール群に比べ有意に得点が高かった。因子II<入眠と睡眠維持>および因子III<夢み>、因子V<睡眠時間>では有意差は見られなかった。術後1日目は最も睡眠覚醒リズムが障害される時期であり、この時期に高照度光療法群で因子Iと因子IVが有意に高かったことは、高照度光療法によって術後せん妄の発症を回避できる可能性が示唆された。
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