本研究の目的は、抗がん剤の臨床試験に参加する外来がん患者が、自ら症状の変化や関心事項を記載する「セルフ・アセスメントノート」の考案・開発である。今年度実施の成果 : 1. PubMed、CINAHL、医中誌から「臨床試験」「副作用」「セルフ・アセスメント」等のキーワードで2008年から過去10年間の文献検索、さらに、慢性疾患領域の患者教育も参考のため検索追加した結果、524件を抽出し、関連する文献分析をした。副作用を記録する患者手帳の作成・使用効果の研究が多く、医療者が把握したい副作用は項目化され、患者が知りたい情報を項目に含めた試みは数件のみであった。臨床試験患者の症状変化への気づきには焦点があてられていない。外来患者教育では、パンフレットやウェブ上の情報提供、電話によるエンパワメント強化や心理的介入、患者教育セッションを付加してセルフケアやマネジメント効果を高める研究がある。2. がん関連学会及び情報サイトから臨床試験患者用パンフレットや患者手帳の資料収集し、内容や簡便性などノート考案のパッケージを検討中である。3. 臨床試験に携わる医師への外来受診時の患者評価に関する聞き取り調査を実施した。欠落しやすい情報として、すでに症状が消失しているものや患者が言うほどでないと自己判断した症状は報告されず把握できないこと、また、医師と患者の症状評価に差があることや、患者が尋ねる検査項目等が得られた。臨床現場でツールを使用する場合は、記載内容を患者と共に確認しフィードバックすることが不可欠といえる。4. がん臨床試験に参加している外来患者のニーズ調査を開始し継続実施中である。この調査結果からは、患者が必要としている情報やアセスメント内容、症状変化への気づきに関わる要因、セルフ・アセスメントへの効果的な関わりやケア提供方法を検討し、平成21年度の「セルフ・アセスメントノート」の考案・開発につなげる。
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