研究概要 |
本研究は,中国人女性と国際結婚した日本人男性,およびその両親の体験の様相を把握し,中国人女性および日本人家族の双方に効果的な家族関係構築に向けた看護支援を検討することを目的とした。今年度は,国籍の異なる者と比較し,中国人女性とその家族に対する支援の特性を明らかにすることを目的とした調査を実施した。日本人の夫をもち,日本で妊娠・出産を経験した7名の中国以外の在日外国人女性を対象に,面接調査を行った。調査の内容は,異文化である日本での妊娠・出産および子育ての経験と日本人家族の関係性についてであった。調査の実施にあたっての倫理的配慮としては,研究の目的や方法,プライバシーの保護,調査結果の公表予定,自由意思に基づく協力であること等について時間をかけて十分に説明を行った後,同意書へのサインを得た。また調査の実施に際しては,プライバシーの保たれる環境の整備,答えたくない質問の拒否の自由性の確保,同意を得てのICレコーダーの録音等に配慮し実施した。データの分析にあたっては調査終了後直ちに匿名化し,厳重にそのデータを保管した。(岩手県立大学研究倫理審査会承認:No.27)。その結果,慣習等,文化の相違に基づくトラブルに比べ,日々の生活における日本人家族とのコミュニケーションや情緒面での問題が多く語られた。また特に義父母との関係性においては夫と在日外国人女性との関係性は大きな影響を与える要素であり,夫の役割の重要性が示唆された。一方,中国人女性と比べ,言葉の問題において大きな課題を抱えていることも明らかとなった。以上のことより,中国以外の在日外国人女性においても中国人女性と同様に,妊娠・出産時期の家族関係においては,日本人家族との関係性に起因する情緒面のストレスが多く,夫との関係性がキーポイントであること,また中国人女性においては,漢字文化の共通性が利点となることが示唆された。
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