本研究では、現在ほとんど行われていない親から子どもへの健康教育を充実させていくために、親が取り組める健康教育、親も参加できるコミュニティベースの健康教育プログラムを開発することを目的とした。そのために現状を明らかにしていくために、各発達段階にある子ども、子どもを持つ親、小学校や中学校の教員へのインタビューを試みた。計画書にある倫理的配慮に則り、研究協力書への署名を求めたが、署名をするということに抵抗があり、インタビューには応じるが、署名はできないという対象者が非常に多く、データ収集が非常に困難であり、計画通りに実施することができなかった。 同時に、健康教育の根本に必要であると思われる親と子どもの関係に焦点をあてた研究、健康教育を進める上での関係性の中で重要である「安心」の概念の分析を発表した。父親と息子の間には、恥ずかしいさが存在しているが、実際に健康について話し合った事のある父息子間には強い関係性がみられた。話すための情報が不足していることも示唆された。母娘間は、強い関係性がみられ、母からの支援が健康維持に影響することが示唆された。「安心」は関係性を円滑にするために必要であり、また円滑な関係性から生まれることが示された。これらの結果より、子どもの健康教育には、親と子ども、特に同性間の親子関係が非常に重要であり、しかし情報不足や方法がわからないことにより、十分な関係性が気付けていない、その点に対しての具体的な援助が必要であることが示唆された。 その他、タイ・チェンマイにおけるエイズ予防教育リーダー養成を視察した。健康の中でもセクシュアリティの部分の教育は、親も教員も苦手意識持ち、子どもも恥ずかしがることも多い。今回の視察から、誰に何をどのようにアピールをしていくのか、活動の継続性をどのように保つのかといった工夫が、日本の文化をもとに考えていくきっかけとなった。
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