2008年4月から研究協力者の選定・依頼準備、インタビューガイドの作成を行い、8月に福岡県立大学研究倫理委員会の承認を受け、8月から10月の期間、出生直後から1歳6ヶ月までの子どもを喪失した経験を持つ父親4名に半構成的インタビューを行い、事例ごとの逐語データを分析した。 その結果、以下の点が明らかになった。(1)子どもを喪失した父親の体験は【子どもへの感情や思い】【自己と向き合うことで子どもの存在や命の捉え方は変容し、悲しみは落ち着く】【妻と新たな世界を作り出す】【自助グループの存在は大きく、今も絆で結ばれている】【仕事はやらねばならないものだが、周りの気遣いに支えられている】【振り返り、語ることで今の自分を確認する】【医療への感謝と不信感】の7つのカテゴリーに分類された。(2)父親の価値観は子どもの喪失の悲しみに向き合うことで変容を起こしていた。(3)父親は喪失体験と向き合い、自己や人生を振り返る中で子どもとの出会いや死、体験の中から学びを得ており、その過程の中で体験に「意味」を見出し、受け入れて生きてきた。(4)父親にとって喪失体験を「語る」ことは、体験を振り返り、改めて悲しみや怒りなど感情を表出できる機会となった。またその中で体験に新たな気づきを得て、体験に意味を考える動機となった。以上より、父親たちは子どもとの出会いから別れ、現在に至るまでの体験全てに意味づけを行っており、自己と向き合うことで子どもの死に肯定的な意味を見出し、今後の人生も喪失と共に生きていく過程を表している。この研究結果を論文とし、2009年3月福岡県立大学大学院修士課程において成果を発表した。 本研究結果と平成21年度に研究実施予定である「子どもの喪失を経験した父親にかかわる助産師.看護師のケアの実態調査」による、医療者が子どもを喪失した父親に提供しているケアを比較し、今後の方向性を探る予定である。
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