難病患者とその家族への支援に関する文献検討では、家族ダイナミクスの良循環を促進する看護師の役割について7カテゴリーが抽出された。7つのカテゴリーは、[情報収集]、[認知領域への支援]、[情緒領域への支援]、「行動領域への支援」、[医療職の連携]、[患者・家族の教育]、[関係作り]であった。また家族ダイナミクスの悪循環を形成する要因については、〈コミュニケーション不足〉、〈介護疲労〉、〈介護への不安と自信のなさ〉、〈家族間の遠慮と期待〉、〈マンパワー不足〉5つのコードが抽出された。これらをもとに訪問看護を行う看護師へのインタビュー調査を行った。対象者は神経難病患者とその家族のケアに5年以上携わる訪問看護師8名で、家族ダイナミクスが良循環あるいは悪循環を辿ったと思われる事例を通して、その要因についてどう考えるかのインタビューを行った。インタビュー結果を質的に分析した結果、難病患者とその家族のセルフケア能力を左右する要因には、先行文献の要因に加えて「療養前からの家族関係」が影響していることがわかった。また、コミュニケーション不足を良循環に変化する要因として、医療職など第三者の関わりが緩衝材的に影響することも明らかとなった。神経難病患者は病気の発症と身体機能の衰え、告知を経て患者を含む家族成員は不安といら立ちを抱え、通常の家族機能が維持できなくなる。難病状態にある患者の家族は、予後の不安や介護負担などでパワーレス状態となりやすいため、家族ダイナミクスが悪循環とならないよう、また悪循環を断ち切るには、家族のセルフケア機能を促進させる第三者の介入が必要と考えられる。看護師は家族機能のアセスメントを通して行動を解釈し、信頼関係を築きながら情緒的支援を行い、家族をエンパワーメントしていくことが求められていることが考えられた。本研究の成果は平成23年8月に日本難病看護研究学会で発表予定である。
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