研究概要 |
本研究は, Group B Streptococcus(B群溶血性レンサ球菌 ; 以下GBS)による新生児GBS感染症予防のために, 新生児GBS感染症の発症要因および医療連携上の課題を明らかにすること, 新生児敗血症/髄膜炎発症GBS株と非発症株の異同を明らかにすること, を目的とした. 平成21年度は, 新生児搬送された早発型GBS感染症17症例の収集ができた. 予後は, 死亡3例, 後遺症1例であった. 発症から入院までの平均時間は, 入院時刻が日勤帯の方が夜勤帯に比べて有意に長かった. 搬送依頼から入院までの時間は両群に有意差がなかった. 日勤帯の9症例のうち6症例は, 午前0時の時点で症状を有しており, かつ, 午前8時以降に依頼・入院していた. 入院が日勤帯の症例は, 夜間既に症状を有し経過を観察し翌朝に搬送依頼していることが伺えた. 早期治療に繋げることができるような体制を整備する必要があると考えられた. 母のGBSスクリーニングは6例に実施されたが, 膣のみの培養(6例)や妊娠35週未満の検査(5例)であり, 全例陰性であった. 適切に妊娠中にGBSスクリーニングを実施し, 妊婦のGBS保菌を確実に捕捉し, G5BS保菌の場合は分娩時に抗菌薬を予防投与することが, 早発型G5BS感染症の予防ひいては新生児搬送の減少のためには重要と考えられた. 新生児GBS感染症発症株と非発症株における薬剤感受性を行った. 発症18株, 新生児保菌15株, 妊婦保菌140株を対象とした. 発症株と非発症株共にPCG≦0.03〜0.06(μg/mL), ABPC≦0.06〜0.12(μg/mL)とPemcillin系の感受性は良好であり, 分娩時に適切に抗菌薬を予防投与することは新生児G5BS感染症予防に繋がると考えられた. ペニシリンアレルギーの代替薬として推奨されているEM, CLDMは耐性株があり投与時は感受性の動向に注意が必要と考えられた.
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