研究概要 |
本研究は,Group B Streptococcus (B群溶血性レンサ球菌;GBS)による新生児GBS感染症予防のために,新生児GBS感染症の発症要因および医療連携上の課題を明らかにすること,新生児敗血症髄膜炎発症GBS株と非発症株の異同を明らかにすることを目的とした. 平成22年度は,新生児GBS感染症確定例の母19名(以下確定例の母)と新生児にGBSが伝播しなかった児の母でGBS保菌していた145名(以下非発症例の母)の比較検討を行った.妊娠中にスクリーニングが実施されていたのは確定例の母6名,非発症例の母143名であった.GBSスクリーニングの時期が妊娠35週以降であったのは,確定例の母は6名中1名,非発症例の母は143名中139名で,オッズ比は0.007(95%信頼区間:0.001~0.051)で非発症例の母の方がGBSスクリーニングの実施時期が遅い結果であった.危険因子(妊娠37週未満の分娩,分娩中の38度以上の発熱,18時間以上の破水)の出現には有意な差はなく,危険因子を持たない正常な経過ならば妊娠35週以降にGBSスクリーニングを実施した方が早発型GBS感染症を予防できると考えられた.更に平成22年度迄にGBS322株を収集できた(新生児血液髄液由来14株(発症株),新生児保菌61株(非発症株),妊婦褥婦腟保菌247株),全てのGBSにおいてpenicillin系抗菌薬(PCG, ABPC)に感受性を示した.1999年~2005年(I期)と2006年~2010年(II期)の2群におけるMIC_<50>, MIC_<90>,耐性率の比較では有意な差はなかった.血清型は,発症株はIII型6株,Ia型5株,Ib, VI, VIII型各1株,非発症株はIb型17株,III型11株,Ia,VI型各10株,腟保菌株はVI型64株,Ib型43株,VIII型39株であった.発症株と非発症株,非発症株と腟保菌株における血清型の分布には差がなかったが発症株と腔保菌株では有意な差を認めた(p=0.04,x^2乗検定).母児共にGBS株が得られた16組の血清型とPFGE型は各々の母児において一致していた.分娩時に保菌妊婦にpenicillin系抗菌薬を予防投与することは新生児GBS感染症予防に有用であると考えられた.
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