研究概要 |
【研究目的】現在、わが国において要介護高齢者の終末期ケア対策は喫緊の課題であるが、要介護高齢者が死亡時の介護保険サービス利用状況を実証データに基づき明かにしたものはほとんどない。そこで1年目である本年度は、死亡当月の介護サービス利用の実態を明らかにすることを目的とした。 【方法】(1) 正式に契約している某市(人口約5,3000人、高齢化率21%)から提供を受けた2000年4月〜2007年8月までの全介護保険給付レセプトデータ2689件のうち、予後データが把握できた1174件を分析対象とし、死亡当月の介護保険サービス利用の状況等について記述分析を行った。 【結果】死亡当月に介護サービスを利用していた者は699人(59.5%)であり、男性259人(38.7%)、女性410人(61.3%)であった。介護度は介護度5が250人(37.4%)、次いで介護度4が149人(22.3%)であった。死亡年齢は男性は平均80.8±8.5歳、女性は平均85.9±8.1歳であった。利用していた介護サービスは、訪問看護が最も多く(27.9%)、次いで訪問介護であった。利用パターンでは、男性は、在宅サービスのみ利用が144人(61.5%)、施設サービスのみ利用が65人(27.8%)であったが、女性では在宅サービスのみ214人(57.5%)、施設サービスのみ利用が125人(33.6%)であった。男性では、死亡月に在宅サービス+短期入所を利用していた者の平均死亡年齢が最も高く83.9±6.8歳であった。女性では短期入所のみ利用していた者の平均死亡年齢がもっとも高く、91.3±4.6歳であり、次いで施設サービスのみ利用の88.4±7.0歳であった。 【考察】本研究結果から居宅サービスが終末期に果たす役割は大きいこと、終末期高齢者のケアの場所には男女差があり、家族介護者の違いなどが背景にある可能性が示唆された。
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