研究概要 |
平成20年度は, 糖尿病の遺伝素因およびその環境要因との相互作用に関するシステマティックレビュー, および本調査に向けたリスク教育資料, アウトカム指標の検討を実施した. システマティックレビューでは, これまでに公表された糖尿病疾患関連遺伝子を整理した. さらに, 2009年に発表された最新のメタアナリシスから, それら糖尿病疾患関連遺伝子が既存のリスクファクターによる発症リスク推定モデルに付加する情報は比較的軽微であり, 家族歴がポストゲノム時代においてもハイリスク者を拾い上げるための有力なツールと成りうることが確認された. これにより, 家族歴は, 健診現場において日常的に聴取される情報であり, それを活用することの有効性を支持するエビデンスレベルの高い文献がシステマティックレビューに取り入れられた. このシステマティックレビューは, 国内糖尿病専門誌に投稿準備中である. 現在, 上記システマティックレビューを元にした, 2型糖尿病患者およびその家族を対象としたリスク教育資料を作成中である. その過程において, 予防行動に関連する要因として糖尿病に関する理解のうち, 遺伝要因と環境要因の相互作用の理解のほかに, 糖尿病の深刻性(特に糖尿病合併症について)の理解が重要である可能性が示唆された. そのため, 来年度予定する本調査において糖尿病性合併症に関する知識と, 予防介入へのコンプライアンスとの関連を検討することとし, 知識の指標となる尺度の作成を行った.
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