研究概要 |
2型糖尿病患者の血縁者を対象とした糖尿病発症予防を目的として,生活習慣改善を実施するための動機付け支援ツールを作成した.本動機付け支援ツールは6ページから成る小冊子であり,健康信念モデル(Health Belief Model)に基づき,糖尿病の重篤性,易罹患性,生活習慣改善の有効性の認知を促し,さらに実際の生活習慣改善の例を挙げることにより,行動実行の障壁を軽減することを目的に構成された.本動機付け支援の内容は,昨年度に実施したシステマティックレビューにより整理した知見に基づいて作成した.易罹患性について,遺伝素因について焦点をあて,体質としての低インスリン分泌能,高脂肪食によるインスリン抵抗性の易惹起性について解説し,それらの体質を持つ可能性の指標として家族歴が挙げられることを提示した.その後,それら遺伝素因を持っていたとしても,身体活動量の増加,低脂肪・高繊維食への移行といった生活習慣の改善により環境要因をコントロールすることが有効であることを強調した. 自記式質問紙による横断調査を実施し,本動機付け支援ツールが130名の患者および49名の子に与える心理社会的影響,行動変容への効果について検討した.本ツールにより,患者の60.7%,子の42.8%において糖尿病に罹患することに対する不安が増していた.しかしながら,予防できることがわかり安心したと回答した対象者の割合のほうが有意に高く(患者76.9%p<0.01,子57.1%p<0.05,符号付順位和検定),正の心理的効果が負の効果を上回ることが確認された.さらに,6割の子において糖尿病に対する意識が高まり,食習慣,運動習慣の改善がそれぞれ59.1%,44.9%の子において実施された.
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