【目的】本研究は、臨床における腰痛発生リスクの高いおむつ交換の実態を明らかにすること、および臨床応用による腰部負担を軽減するおむつ交換技術の有用性を検証することを目的とした。平成20年度は、腰痛発生リスクの高いおむつ交換には、夜勤帯のケア回数の増加、ベッドの低さ、利用者の体格差・拘縮などが影響することを明らかにした。さらに平成21年度は、高齢者施設における看護・介護管理者の80%以上がスタッフの職業性腰痛に対する問題意識をもち、組織的な腰痛予防教育を約50%以上行う一方、腰痛保護ベルトの紹介や電動で高さ調節できるベッドの総台数が療養病床、老健、特養と施設により異なることを明らかにした。そして平成22年度は、腰痛発生リスクの高い状況下におけるおむつ交換時の腰部負担を生体力学的評価し、腰部負担を軽減するおむつ交換技術の臨床応用について検証することを目的とした。 【方法】対象:被験者は研究協力の得られた看護・介護職(平均年齢31.2±4.4歳)。要介護者モデルは寝たきり度C2を想定し、テープ型紙おむつと尿とりパッドを装着した。測定方法:3次元動作解析、バイタルサインズ(体温、血圧、脈拍)、主観的評価(自覚疲労症状、眠気)を用いて、5つの時間帯(20、22、24、2、5時)におむつ交換作業を行った。 【結果】作業時間帯による3次元動作解析には明らかな変化はみられなかった。一方、バイタルサインズは作業時間帯が遅くなるにつれて低下し、5時に上昇する変化がみられた。主観的評価も同様な変化がみられた。 【考察】夜間帯のおむつ交換は、サーカディアンリズムによりバイタルサインズが低下しており、腰部負担につながりやすいと考える。そのため腰部負担軽減として、スタッフ個人がベッドの高さ調節や膝乗せ姿勢を活用することに加えて、組織的な腰痛予防対策(作業時間帯の調整など)が必要であることが示唆された。
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