平成21年度は、身体合併症を有する精神障がい者のケアに関する文献、ならびに地域における精神保健ケアシステムに関する文献のレビューを幅広く行った。その結果、身体合併症を有する精神障がい者に関する国内の先行研究は数が少なく、総合病院精神科における身体合併症をもつ入院患者の特徴や他科との連携、ならびに精神科救急医療の現状と課題についての文献がみられた。同様に、看護ケアに関する先行研究は少なく、それらは事例研究がほとんどであった。具体的には、入院中の身体合併症を有する精神障がい者が手術を受けるために他院と連携を行った事例や退院後にデイケアに通所しながら身体疾患のケアを含むセルフケアに介入した事例、また、精神障がい者が地域で生活を維持するために、身体疾患と精神症状の自己管理に関する援助や、訪問看護および外来における関わりに関する報告などがみられた。一方、海外の先行研究では、精神障がいの早期発見および早期介入に関する新しい文献が多かった。 また、オーストラリアにおける精神障がい者の特徴や、精神病床数が少なく、急性期の状態のときに短い期間、精神科病棟に入院し、地域で生活している精神障がい者が多いという精神医療の現状を踏まえて、若年者の精神障がいに関する早期介入モデルや、精神科病院を退院した後、精神障がい者が地域に戻る前に入所する居住型施設で行われているケアの特徴などについて検討を行った。これらの結果を受けて、日本における精神医療の現状と比較検討しながら、日本におけるメンタルヘルスの問題への早期介入や、地域ケアにおける連携のあり方などについて考察を行った。
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