本研究の目的は、1点目は、がん患者に対するself perceived burden scale(以下、SPBSとする)日本語版の信頼性および妥当性の検討である。2点目は、老年期がん患者の他者への負担感における影響要因についての検討である。 平成21年度の目標は、昨年度に作成したSPBS日本語版を用いた本調査の実施であり予定通り実施した。調査対象者は、外来通院中の固形がん患者とし、郵送法にて行った。有効回答者数は210名(67.7%)であった。患者背景では、男・女比がほぼ同比率であり、がんの原発部は、胃、乳線、大腸の順で多かった。また、performans status 1の患者が半数を占めた。主介護者は、配偶者が多く、次いで子供であった。 SPBSの回答平均は33.19(SD23.31)であった。この結果は、SPBS原版の回答平均より上回り、がん患者が抱いている他者への負担感の大きさが示唆された。がん患者に対するSPBS日本語版の信頼性については、クロンバックα係数が0.92~0.96であり、原版と同様の高い結果を示し、内的整合性をもつと考えらた。構成概念妥当性については、探索的因子分析の結果、原版とは異なる因子構造を示した。これは、原版が米国人を基礎として作成されておりわが国と西洋諸国との社会的・文化的な相違が反映された結果として原版とは異なる様相を示したのではないかと考える。今後は、確認的因子分析を実施し、引き続き構成概念妥当性について検討を行う。基準関連妥当性については、SPBS日本語版とQOL、精神健康状態とは相関を示しており外的基準を満たすと考えた。 平成22年度は、SPBS日本語版の信頼性および妥当性の検討を完了させ、本研究の目的の2点目である老年期がん患者の他者への負担感の関連要因について分析を行う予定である。
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