1. 質問紙の信頼性・妥当性の検討 昨年度作成した子どものアドビアランス質問紙の子ども用と母親用を用いて、A県内の精神科および小児心療科に通院し、向精神薬による薬物療法を受けている子どもと母親を対象に調査した。対象者の確保の困難さゆえ、現在は服用していないが過去に服薬したことがある子どもを含め、年齢も15歳以下から18歳未満へと拡げた結果、母子33組のデータが得られた。統計解析を行った結果、作成した質問紙の構造が明らかになった。また、Cronbachのアルファ係数は0.76であり内的整合性が確認され、外部基準尺度として用いた親子間の信頼感に関する尺度の子ども用の質問紙との間に有意な相関が見られたことから、質問紙の信頼性・妥当性が確認された。また、児童用不安尺度との間に併存的妥当性は確認されなかったものの、不安の下位尺度との間に弱い相関が見られ、不安の種類とアドヒアランスとの間の関連性が示唆された。独立因子とアドヒアランスとの関連については十分検証できなかったが、母親が服薬による子どもの症状の改善を自覚している場合、子どものアドヒアランスが高いこと、子どもが中枢神経刺激薬を服用している場合、母親がこれを自覚しやすいことが明らかになった。また今回の調査対象は比較的アドヒアランスが高いことが予測されるが、子どもが服薬していることに対して自責間を抱いていたり、将来への不安を感じている母親が多いことが明らかになった。独立因子との関連や因子分析による妥当性の検討などは今後の課題として残った。 2. 今後の展開 調査結果を参考に、母子を対象とした心理教育プログラムを作成する。向精神薬による薬物療法を受けている母子5組程度を対象にプログラムを実施し、実施評価として自作のアドヒアランス質問紙を用いる。プログラムの実施後にはインタビューを行い、その内容を次回のプログラムへ反映させていく。全過程終了後、母子にどのような変化があったかを検証するとともに、質問紙の構成概念妥当性についても検証する。
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