改正介護保険法では介護保険の基本理念である「自立支援」を徹底するため、新たな予防給付の再編が行われ、予防重視型システムへの転換が図られた。このような中、高齢者の自律性についても評価していくことが求められるが、適切な尺度が開発されていないこともあり、十分な知見が得られていない。そこで本研究ではヘルツのPEA尺度日本語版を用いて、介護予防サービス利用者の自律性を明らかにすることを目的とした。 20年度は自律性測定尺度について、一般高齢者を対象にPerceived Enactment of Autonomy(PEA)尺度日本語版の開発を行い、PEA尺度の妥当性・信頼性について検証を行った。PEAとは「自分自身のために、そして自分のニーズや目標に従って自由に行動や行為の過程を選択する能力を感じ、認識する状態」と定義され、自発性(voluntariness)、個性(individuality)、自主独往(self-direction)の3つの要素から構成される。PEA尺度は研究者らにより日本語に翻訳され、バックトランスレーションを経て本調査が行われた(N=220)。原版と同じ3因子31項目の信頼性はα=.93と高く、下位尺度の自発性、個性、自主独往についてはα=.75、.86、.78と内的整合性が確認された。妥当性については、PEAとLocus of Controlにおいてr=.255(p<0.01)と有意な相関を認め、構成概念妥当性が確認された。次いでPEA尺度日本語版を含む質問紙票を作成し、介護予防サービス利用者を対象にデータ収集を行っており、現在のところN=57の回答が得られている。
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