本研究の目的は、対人交流やコミュニケーションに支障を持ち、認知症治療病棟に入院している高齢者に、AATや動物を活用したレクリエーションを実施し、継続的かつ詳細な観察や評価を通して患者一動物間、動物が存在する環境での患者間、患者-スタッフ間における、コミュニケーションのありようを詳細に記述し分析し、その発展性を検討することによって、精神看護領域におけるAAT活動の構築を目指す基礎的研究として資料を作成することにある。 本年度は、まず研究の実施にあたり協力を得られた2施設の認知症病棟におけるアニマルアシステッドアクティビティ(AAA)実施に向けて、施設やボランティア団体との打ち合わせや手続きを行い、その後倫理委員会の承認を受けた。実際の研究を実施する前段階として対象者2名に4-6回のAAAを実施したのち、4名の対象者に対するAAAによる反応やコミュニケーションを記録した。同時に精神機能評価に関して尺度(GBS、MENFIS、N-ADL、MNスケール)を用いて記録し分析中である。 また、対象病棟における職員に対してAAA前、6回実施後に、参加高齢者に関するアンケートを実施し、集計している。AAA実施前においては、2施設において46名の職員から回答が得られ、そのうち45名を分析対象とした。病棟でのAAAの参加経験の有無は、参加高齢者の犬、他の参加者、ボランティアに対する態度それぞれの項目において高齢者の意欲やコミュニケーションの発展に対する期待が高い傾向にあった。 さらに、認知症対象者のAAAにおける参加中のコミュニケーションのビデオ観察からは、犬の行動や状態に関する発話は初めから比較的多く見られ、犬の心的状態に関する発話は少ないが徐々に見られる様子が観察された。
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