平成22年度の研究目的は、メンタルヘルス問題を抱える労働者の職場における関係性の様相と産業看護職の支援内容について、休職前・休職中・職場復帰後の期間に分けて検討することである。研究対象者は、北海道内の事業所や健康保険組合などに勤務する産業看護職で、産業看護の経験が5年以上の者とした。研究対象者の選定にあたっては、日本産業衛生学会北海道地方会産業看護部会に研究対象者の紹介を依頼した。研究方法としては、研究への参加に承諾を得られた10名に対して、労働者とのかかわりや思いや職場における関係性を時系列で整理したインタビューガイドをもとに、半構造化インタビュー法を用いた面接調査を行った。対象者の承諾を得てインタビュー内容を録音した後に文書化し、内容分析を行った。主な成果は以下の4点である。第1に、メンタルヘルス問題を抱える23人の労働者の事例が得られた。そのうち、相談開始時期が休職前の事例が15人、休職中が6人、職場復帰後が2人であった。第2に、労働者がメンタルヘルス問題を抱える主な要因は、上司との関係性と仕事内容の変化であった。第3に、職場との関係性に影響を及ぼす主な要因としては、職場の寛容性、普段のコミュニケーション、業務量であることが見出された。第4に、産業看護職による支援の主な内容は、労働者による自己決定の支援および上司や人事担当者や主治医との調整であり、特に後者については段階が進むにつれて労働者の職場復帰をふまえた環境整備と仕事内容の調整が重要な課題になることが見出された。これらをふまえると、組織風土への関与に関する産業看護職の役割として、職場の寛容性や環境づくりについて支援を行うことが特に重要であり、労働者が問題を抱える以前からの取り組みの必要性が示唆された。
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