社会参加の理念は当事者の主体性が含まれており、当事者中心に支援されるべきことであることを鑑みれば、当事者一人一人の現実・実態に即した支援が求められる。そのためには、(1)入院中にどのような体験がなされどのような主観的意味を持っているのか(2)どのような自己概念が形成され、どのような自己で社会参加を始めるのか(3)安定した社会参加までの過程における主観的な苦しみと有意味だった支援内容、という部分の理解に基づいた当事者理解が必須であるといえる。 筆者は当事者の視点に立った社会参加の支援のあり方を明らかにするという研究構想の下、3年以上地域で生活している当事者7名を対象に発症、精神科病院入院から現在の生活に至る過程についての主観的体験を明らかにする研究に取り組んでいだ。研究から、当事者にとっての入院体験の意味は、入院生活を通じて自己の危機に直面し「精神科患者という自分」という自己概念に再編した時間と場所と考えられた。このことから、「スティグマ」を持ったまま退院後の地域生活を始めていくことが考えられた。 地域生活を送るに当たっての「生活のしづらさ」は当事者が社会参加過程において感じる「生活のしづらさ」は、(1)自己の喪失感(2)自己表現の喪失(3)内なる偏見の存在の3点と考えられた。 この3点は精神疾患そのものに由来する障害から生じているというより、「精神科患者という自分」という否定的な自己概念から生じていると考えられ、当事者の主観的な「生活のしづらさ」は自己が自己を苦しめているという図式であることが示唆された。
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