研究概要 |
21年度は,前年度に作成した質問紙によるアンケート調査を実施した.過疎地であり,高校へ進学するために親元を離れることを余儀なくされている子どもたちが,性行動が活発化する高校生活を迎える前に,自己の心身を守る知識と手段を持つことの意義は大きい.本調査は子どもたちの行動変容に結びつく有効な指導方法を検討するための指標を得ることを目的とし,地域における中学生の性行動・性意識に関する実態および教職員の性教育に対する意識・実施状況を調査するものであった. 対象は,過疎認定地域である10町村内にある公立中学校の内,学校長の承諾が得られた6校に通う学生と教職員で研究への同意が得られた者とした.回収率は学生173名;72.1%(女子92名;53.2%,男子79名;45.7%),教員45名;95.7%であった. 学生の性行動に関する質問の結果では,デート経験率や初めてデートを経験した年齢の平均値等において,全国調査の結果と同様に性行動の低年齢化傾向が示されており,地域性によらない特徴が窺われた.性行動の活発化を促す要因の一つと考えられている社会的適応のあり方に関して,友人との会話や家族との会話の頻度を聞いた結果では,家族との会話がより多く交わされていることが表れており,家族による統制が強いことが考えられた.教員の結果においては,性教育実施者の約4割は実施時に困難感や戸惑いを感じており,望ましいと思う実施者には「専門的な知識を持っている」などの理由から養護教諭が最も多く選ばれた(27.8%).また,教員の半数以上は学校で実施されている性教育の内容や頻度,方法について十分と思わないと答えており,学校と地域,医療職が連携することの有用性が窺われた.家族間のコミュニケーションがよくとれているというこの地域の生活環境のもつ強みを活かし,家族を交えた性教育なども検討していく価値があることが示唆された.
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