今年度は、看護師への暴力を思い止まった経験を持つ患者3名を対象として行った面接調査の内容を逐語録に起こし、患者が看護師への暴力を思い止まった際の思いと希望する看護に焦点をあて、質的に内容分析をした。その結果、患者が看護師への暴力を思い止まる時の思いとして、<今を大事に生きたい>、<暴力を振るうことに対する罰への恐れ>、<相手への非難>といった3つのカテゴリーが明らかになった。特に<今を大事に生きたい>は、≪今を大事に生きる≫、≪みんなと仲良くしたい≫、≪暴力は振るいたくない≫といった3つのコードが明らかになった。また、看護師に希望する関わりについては、<その人を理解した上での見守り>が明らかになった。以上より、患者が看護師への暴力を思い止まる看護については、第一に患者自身が<今を大事に生きたい>と思える関わりや患者自身の力を引き出せる関わりなどが重要と考える。具体的には、入院目的を明らかにし、今後、どのようになれば退院できるかといった見通しや希望が持てるように、定期的に看護計画を一緒に評価することが挙げられる。第二に、患者が安心して入院生活が送れるように見守ることが大切と考える。患者が看護師への暴力を思い止まる時の看護とは、その時の声掛けというよりは、間接的ではあるが信頼できる人による常日頃からの見守りこそが重要と思われる。今回、患者が看護師への暴力を思い止まる時に相手を馬鹿だと思うといった<相手への非難>が明らかになったことは遺憾である。今後は、患者が持っている力を尊重することを前提とし、患者と看護師が協働して、看護師への暴力を思い止まることができるような患者教育プログラムの開発が期待される。
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