本研究の目的は、在宅重症心身障害児の育児支援のために、母親の育児の意欲につながる要素を明らかにし、育児支援につながるケアを考察することである。平成22年度は東日本大震災により計画していた会議を中止し、その結果研究実施計画時期を約4カ月繰り上げた状況であった。しかし計画に修正を加え今年度は1)在宅重症心身障害児を育てる母親の事例及び先行研究のレビューから、育児の課題と意欲につながる要素を再分析し、子どものライフステージ別に整理する、2)1)の内容から効果的な支援について検討することを目的とした。 1)については、<ライフステージ別に特徴的な課題>と<継続課題>が見出された。出生時から神経学的後遺症をもつことが予測される児における<ライフステージ別に特徴的な課題>を4つの時期に分類した。[乳児期]では子どもの身体的安定や、親の障がいの把握、ケア方法の習得、[幼児期]では子どもの新たな身体的問題や発達、社会化を支援する場、[学童/思春期]では学校生活への移行、第二次性徴に伴う身体的精神的変化、家族以外の人から受けるケアの機会、[青年期以降]では親との分離に伴うストレス、機能低下や退行、生活の場の選択と親の子育てのシフトへの葛藤、将来像が描けない親の不安など、ライフステージに応じ困難な要素が付加されていた。どの時期にも共通する<継続課題>として、子どもの身体的安定、安全、発達支援、緊急時の対応、親の身体的精神的負担、親の健康問題への対応、家族の生活リズム確立、子どもが亡くなることへの準備、社会資源の活用、子どもの生活の場の移行に伴う情報共有とコーディネートなどの要素が見出された。 2)については、1)の結果に応じた支援体制の整備が重要と考えられた。今後は特にサポートネットワークを拡大し、安全で質の高いケアを提供するための環境整備、その根拠となる研究の蓄積、全国的な支援体制のシステム、ネットワークづくりが我が国における課題と考える。
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