研究概要 |
本研究は, 転倒リスク因子を抱えていると考えられる病院に入院中の認知障害をもつ, 特に認知症高齢者を対象とし, 病院版認知症高齢者用転倒危険予測尺度の開発に向けて, 新たな転倒リスク因子の探索と尺度の再構成に努めることを目的とした。そのために平成20年度は主に現在明らかになっていない入院中の認知障害をもつ, 特に認知症高齢者の転倒リスク因子の抽出を目的とした。まず, 先行研究の文献検討を行い, 調査項目について検討した。調査は, 関東地区にある認知症専門病棟や高齢者の割合が多くを占める病院, 計4病院15病棟を対象とした。ベースライン調査は, 平成20年11月の1ヶ月間, 対象病棟の患者全数に行った。調査項目は, 基本属性, ADL, 精神症状関連項目, 転倒リスク因子関連項目とした。また, 平成20年12月から平成21年1月の2か月は新規入院患者を対象に同じくベースライン調査を行った。なお, 倫理的配慮を行い, 承諾の得られなかった対象は除外している。転倒事故調査については, 平成20年11月から6か月間, 転倒事故を生じた患者に対して行った。調査項目は属性ならびに転倒事故発生状況, 転倒事故発生時の患者の状態に関する項目とした。結果として, ベースラインとして対象となった患者は現時点で760名である。転倒事故調査については対象期間を6か月として設けているため継続調査中であるが, 転倒事故件数は2月末時点の4か月間で117件であった。平成21年度は転倒事故調査が終了次第, 分析を行い, 転倒事故を生じた患者の特徴を明らかにし, 尺度の再構成を行った上, 再度調査を行うことを予定している.
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